事務所コラム
職員コラム「ベランダの片隅から」
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2025年2月17日
一昨年、とうとう鉢植えに手を出してしまった。
最初は紫陽花だった。引っ越したばかりのベランダは広く、あまりに殺風景で、何か慰めになるような優しい色が欲しくなったのだ。そこで、コンペイトウ・スマイルという品種の、薄青い花弁の一鉢を置いたのが始まりだった。気がつけばエニシダ、朝顔、さらにはクレマチスと、いつの間にか鉢はどんどん増えていった。今では常に五つか六つは何かしらが植わっており、季節ごとに咲く花や茂る葉が、目を楽しませてくれている。
植物の良さは、そのひたむきさにある気がする。光のさす方へ枝を伸ばし、葉を広げ、花を咲かせる。誰かに褒められるために根を張るのではない。たとえ誰の目に留まらなくても、咲くべき時が来れば咲き、葉を落とす時が来れば静かに萎んでいく。
その姿に、ふと自分を重ねることがある。他人の評価や期待に振り回されず、ただ一心にやるべきことをやる。そんなふうに生きられたら、どれほど清々しいだろうと思う。実際には難しいが、それでも、風に揺れる葉や花を見ていると、少しだけ肩の力が抜けるのを感じる。
年明け、初めて球根を植えてみた。水仙とクロッカスとチューリップ。人間の都合で、窮屈な鉢の土に埋めたにもかかわらず、もう芽が伸び始めている。まだ肌寒い風の中に、わずかな春の気配を感じ取ったかのように、芽は静かに伸びていく。
その姿を見ていると、自分が明るい方へ向かっていける予感がする。たとえ今回上手く咲けなくても、また一年、土の下で力を蓄えて、何度でもやり直せばいい。そう思わせてくれる何かが、ベランダの片隅にあるのは良いものである。