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三平和男コラム「学生街の喫茶店の思い出」
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2023年11月13日
昔の学生街には、若者の胃袋を満足させてくれる安くて美味しいお店があって、自分の家で食べているような居心地の良さを感じたものだ。学食とは異なり、店主との人間的なふれあいもあって、良く面倒を見てくれた。社会に出てからも、何かあるとお店に行っては仕事の愚痴を言って、励まされたこともある。当時、筆者の周りの友人たちは地方出身者が多く、わずかな仕送りとアルバイトで得たお金は友人等との酒宴で早々になくなり、いつも腹を空かせている者も少なくなかった。そんな学生にも行きつけの食堂の親父さん、おばちゃんや喫茶店のマスター、ママたちは、いつも「出世払いでいいよ」といって腹一杯とんかつ定食やナポリタンを食べさせてくれたものだ。果たして、出世した後につけを払ったかどうかは不明だが、たぶん払っていないのだろう。
学生時代にお世話になった飲食店は何軒もあるが、特にご厄介になったのがお茶の水駅近くの「路地」という喫茶店だ。明治大学の文系は1、2年が明大前校舎、3、4年がお茶の水校舎だったので毎日、大学に行くというより「路地」に通っていたという感じがしている。授業の時は店から教室に向かい、終わるとまた戻ってくるというぐらいサークルの部室のように入り浸っていた。毎日大盛のナポリタンやミートソースなどを食べていて、しかも日によっては昼だけではなく夕方に食べることもあったが、夕方の分はいつもサービスだった。そんな儲からない客にも拘らず、図々しくも、我々サークルの皆でいつもお店の2階を陣取ってしまっていた。それでも我々に対していつも優しく接してくれていたのがお店のママだった。卒業して数年後にお店をクローズすることになり、仲間たちと集まってマスター、ママと思い出話をしながら、別れを惜しんだ。涙とともに最後に食したナポリタンの味は、今も忘れぬ青春の思い出である。
今月、3年ぶりに大学時代のサークルのOB会が行われる。残念ながら「路地」のお店はもうないけれど、その時だけは45年の時の流れを忘れ、皆、二十歳前後に戻れるのは、楽しく幸せなことだと思う。
季節の変わり目、体調管理には一層ご留意ください。今月もどうぞ宜しくお願い致します。