特集
テレワーク対応の労務管理・評価制度
新型コロナウイルス感染症拡大予防対策として日本でも急速に活用されている「テレワーク」。
実際のところ生産性向上につながっているのか、職場の連携はとれているのか、労務管理をどうすべきか、正当な評価をどうすべきか、とご経営者や人事担当者の皆様は悩むことがあるかもしれません。
テレワークは1970 年代からあるワークスタイルで、歴史も古く現在では世界中の労働者の約5 人に1 人がテレワークをしていると言われています。
テレワークという言い方の他、在宅勤務ともよく言われますが、ほぼ同じ意味のように使われていても若干違いがあります。
「テレワーク」はICT(情報通信技術)を利用し、仕事場は様々、雇用形態も多様な契約形態があります。
「在宅勤務」は所属している勤務地(オフィス)があり、週に何日かを自宅で作業することを言い、従来の雇用契約で業務管理や勤怠管理を見直し、対応ができるものでもあります。
実際のところ生産性向上につながっているのか
テレワーク・在宅勤務の重要な点は、ICT(情報通信技術)のフル活用です。勤務と違い、出勤も休憩も退勤も見えないので、勤怠管理を行える通信技術サービスが必要です。また通信手段も単に電話やメールだけではなく、もっと手早く気軽にやりとりができるチャットや、表情が見えて意思疎通がしやすいWEB 会議の活用も重要です。
ICTを利用することで、「何をしているのかわからない」などという漠然とした不安からデータで管理、把握することが可能となります。
総務省の通信利用調査(平成29 年6 月発表)によると、ICT の導入による労働生産率で、クラウドサービス利用企業が未実施企業の1.3 倍、テレワークによるICT 未導入企業の1.6 倍とICT 導入はテレワークにおいて必須となっています。
テレワーク・在宅勤務でも良好な連携、意思疎通を実現する
一昔前までは電話かメールで連絡するというのが主でしたが、昨今はチャットやWEB会議など、多くのコミュニケーションツールがあります。
業務連絡をメールで行うとどうしても一方通行的発言や指示のみが飛んでくるイメージがありますが、普段プライベートで使っているチャットもビジネスでは頻繁に使われるようになりました。メッセージの送信までの速度や「いいですね~」という短文もメールとは違い、失礼を感じさせないツールです。
また、WEB会議もPCのみならず、スマートフォンやタブレットなどで、電話の代わりになるような手軽さがあり、積極的に活用することで、メールの業務連絡とは違い、相手の意図も伝わりやすく、業務効率に大きく貢献するものと言えます。
テレワーク・在宅勤務の労務管理をどうすべきか
テレワーク・在宅勤務の活用は、優良な人材の採用にも貢献し、また通勤時間の削減によるワークライフバランス、子育てや介護が必要な方も仕事ができるなど、両立支援の面でも有効な働き方です。
また、障害者雇用の面でも効果があり、職場近隣以外の地方在住者の雇用も可能になり、働ける障害者は既に働いていて、障害者の新規雇用が難しいという問題も解決できる可能性が高いと考えられます。
さて、これらテレワーク・在宅勤務が働き方改革の導入、対応にも有効な仕組みとして導入が進んでいますが、労務管理の面では以下の点を見直す必要があります。
1, テレワークなのか在宅勤務なのかで雇用の形態や条件の見直し
場所を選ばなテレワークや自宅での勤務において始業時間や休憩、就業時間を明確に定めないフレキシブルな働き方をする場合、今までの雇用契約から見直す必要があります。
2, テレワーク・在宅勤務導入では就業規則の改定をする必要があります。
- テレワーク勤務をさせるための規程
- テレワーク勤務用の労働時間の設定と規程
- テレワークに必要な通信機器やその費用の負担に係る規程
- フレックスタイム制の導入には1 ヶ月の総労働時間とコアタイムの規程
- 私用外出などの管理方法と規程
これらは改定後常時10 人以上の労働者を雇用している場合は法務局への届け出が必要となります。
また、雇用時や解雇時の労使トラブルの対応で就業規則に規程がなければ会社としてのリスクが高くなることも注意する必要があります。
3, テレワーク・在宅勤務中の労働災害
例えば、在宅勤務中に椅子から転倒して怪我をした場合、業務災害と認められます。
ではカフェでのテレワーク業務は、そこに向かう時の災害はどうなるのか。
これらテレワーク・在宅勤務での想定できる労働災害について事前に災害ケースと対応方法について定めておく必要があります。
テレワーク・在宅勤務の業務に対する正当な評価
職場での勤務と違い、顔の見えない、今何をしているのかわからないという視点から疑いを持ってしまい、正当に評価されないというケースもあります。前述である通り、テレワーク・在宅勤務はICT(情報通信技術)の活用が前提となるため、これら業務のプロジェクト・タスク・進捗などの管理をクラウドサービスの利用により業務量や進捗がデータで見ることができます。
感覚の評価ではなく、数値による評価に切り替える必要があります。
中小企業経営において、結束感や方針変更などによる対応速度など、今までの勤務方式とテレワーク・在宅勤務の違いに戸惑うこともありますが、しっかりとした制度と管理方法、通信技術の活用で、雇用環境の改善が生産率を高め、更に優秀な人材や即戦力の人材の獲得にも繋がり、新時代の経営に大きく貢献できるものと考えられます。
三平事務所ではテレワーク・在宅勤務の導入から、運用の見直し、テレワーク・在宅勤務での各種規程の作成や運用サポートまでご相談いただけます。